理系研究者のあんてな

研究、読書、雑記帳

論文の読み方をどのようにして身に付けたか

論文書きのため少し更新が鈍ってました。論文書き自体は結構好きな作業なのですが、一つのことに集中すると他がおろそかになってしまうのが私の悪いクセです。

 

論文を書くためには沢山の論文を読まなければなりません。特に論文執筆の初心者(私も今回が初めての英語論文執筆です。)はたくさん論文を読んで、論文の構成や特有の言い回しなんかを身に浸み込ませることが大切だと思います。

 

「論文 読み方 コツ」とかで検索すればたくさんヒットすると思いますが、学生目線で書かれているものは意外と少ないので、今回は私の論文の読み方を紹介します。

 

研究室に配属された直後

研究室に配属されて間もないころは、なんか先生も先輩も論文ばかりヨンデルナー程度の認識だったかと。このころは私にとって英語論文は全く未知のものでした。

とりあえずなにか論文を読んでみようと思いたちましたが、どの論文を読めばいいのか全く見当がつきません。そこで私は指導教員(Aさん)に最初に読むべき論文を教えてもらうことにしました。Aさんは私の興味関心や知識レベルを考慮して論文の選定をしてくれたので、迷いなくその論文に集中することができました。

Aさんは鬼のような数の論文を読んでいて、研究能力も非常に高い助教授です。私は研究のイロハを全て彼から学んでいます。

最初のころは英語の論文を一本読むのにもひと苦労するので、質の高い教育的な論文を信頼できる先生や先輩に教えてもらうのが良いと思います。

 

研究テーマが決まった後

研究テーマが決まり実験の計画を練る段階になると、テーマを絞って沢山の論文を読むことになります。私の場合、研究室内に同じテーマの研究をしている人がいなかったので読むべき論文を自力で探しました。

とりあえずキーワードで検索して、ヒットした論文の中にそれらしいタイトルのものがあればそれを見てみます。アブストラクトに目を通してこれだと思ったらイントロを読みます。イントロには大抵、その研究分野・研究テーマの重要な論文が引用されています。

キーワード検索でヒットした論文はショボイ論文である可能性も高いですが、引用されている論文は読む価値のあるものが多いです。あとはその論文を起点にしてリファレンスやサイティングをたどっていけばいいと思います。このときインパクトファクターの高いジャーナルからでている比較的新しい論文を読むと、その分野を俯瞰できていいですよ。

 

 

研究分野に十分なじんできたら

ある程度の数の論文を読むと同じ分野の論文はポンポン読めるようになります。アブストラクトを読んで興味を持ったら結論を読みます。そうすると大体何が書いてあるかつかめるので読むべき論文か判断できます。

私は実験をしながら関連する論文を読んでいました。朝、論文を読んで研究室に行き、実験をしながら待ち時間に論文を読み、帰り際に夜と次の日の朝に読む論文をコピーしていくという生活を半年ほど送りました。

この段階になると論文を検索して見つけても、多くのものはすでに読んでいるという状態になります。副産物としてTOEICの点数も上がります。

 

いざ論文を書く

論文を書くときには、その研究の意義を明確にしたり論証をサポートするために文献を引用します。そのため論文の読み方も変化しました。勉強や知識強化のために読むというよりは利用するために読むといった感じになります。

 

最後に

今回は私の論文の読み方を紹介しました。論文読み初心者の参考になれば幸いです。

最初に話した通り私自身、論文を書くのは初めてで、現在も執筆中です。この論文を仕上げた時に、また何か気づいたことがあればまとめてみたいと思っています。

 

雨の匂いの正体【1分で読める論文紹介】

「雨の日が楽しくなる方法」

 

結論から言うと、雨の匂いの原因は

 

雨粒が地面に落ちた時、とても小さな水の微小粒子を空中に巻き上げる

 

というものです(下図)。この微小粒子が風に乗って運ばれることで、あの雨の匂いが生まれます。

 

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予想通りだと感じる人もいるかもしれませんが、それを客観的なデータに基づいて証明するのが科学者の仕事です。

実際、1964年にオーストラリアの研究者によって、この雨の匂いがペトリコール(petrichor)と名付けられて以来、今日までその具体的な発生メカニズムは解明されていませんでした。

 

この長年の疑問を解決するために、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が高速度カメラを用いて液滴の落下・衝突過程を詳細に観察しました(上図)。

この研究成果は今年の1月に科学論文誌「Nature Communications」に発表されています。

 

研究グループによると、発生した微小粒子には地面からの芳香成分だけでなく、ウイルスやバクテリアなども含まれている可能性があるとのことです。

彼らは次の研究として、大腸菌などの汚染物質が雨によって拡散されるかどうかを調べているようです。

日常にある些細な現象について真剣に研究することで、私たちに恩恵がもたらされる(かもしれない)という良い例です。

 

「雨の科学」に興味を持つことで、雨の日がより楽しく豊かなものになるかもしれませんね。

 

▼実験の動画を観たい方はこちらをどうぞ。(解説は英語です)

www.youtube.com

 

 

Source:

1. Rainfall can release aerosols, study finds | MIT News

2. BBC - Earth - How the smell of rain happens

 

Reference:

1. Y. S. Joung et al., Nature Communications (2015).

Aerosol generation by raindrop impact on soil : Nature Communications : Nature Publishing Group

 

店員さんの言葉が聞き取れないときに「ごめんなさい?」と聞き返すことのススメ

私はコンビニのレジなんかで店員さんの言葉が聞き取れないときに「はい?」と聞き返してしまうクセがあります。

「はい?」って言いやすいから結構使っている人も多いけれど、あまり印象は良くないですよね。

 

以前、私も接客のバイトをしていたのですが、「はい?」って聞き返されるとあまり良い気はしませんでした。言い方にもよると思うのですが、「何言ってんのお前?」みたいな、少し馬鹿にされているようなニュアンスを感じることがあります(私だけ?)。

少なくとも私自身「はい?」と言ってしまったときには必ず後悔します。

 

英語だと聞き返すときには「Sorry?」とか「Excuse me?」、「Pardon?」というのが一般的ですね。私は「Sorry?」をよく使います。言いやすいし、聞き取れなくて申し訳ないねというニュアンスも伝わります。

 

そこで、私はこれらの英語に代わる言い方が日本語にもないか考えてみました。

「すみません?」だと聞き返しているのではなく、何か話しかけているようにも感じられますし、「失礼?」は少し仰々しいですよね。

 

最終的に落ち着いたのが「ごめんなさい?」です。

 

はじめは少し言いにくいけれど、馴れてしまうと使い勝手が良いです。

 

もちろんどのような言葉を使うかだけでなく、話し方も重要です。

同じ「はい?」でも爽やかな笑顔で言われれば不快に感じません。

でも、毎回聞き返すときに爽やかな笑顔をつくるのは風早くんでもなければ難しいと思います。(笑)

やはりどのような話し方であっても、ある程度良い印象を与えられる言葉を使うことも大切なのではないでしょか。

 

最後に「ごめんなさい?」が実用的かどうか簡単にテストしてみましょう。

あなた(コンビニ店員という設定で)が苦手とする人を思い浮かべてみてください。ガラの悪い大学生でも眉間にしわを寄せた神経質そうなOLでもなんでもいいですが、この人をAとします。

 

ケース①

あなた 「お弁当温めますか?

 A   「はい?」

 

ケース②

あなた 「お弁当温めますか?

 A   「ごめんなさい?」

 

どうですか?「ごめんなさい?」だと第一印象が悪くても、実はいい人そうだなって思いませんか?

 

君に届け 13 (マーガレットコミックス)

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2016卒、理系大学院生の就活記録【IHI、住友重機械工業】

重工業ってかっこいいし安定してるよね!ってことで説明会に参加しました。

 

IHI

航空機向けのエンジンなどで有名な会社です。宇宙事業もやってます。

私は3月下旬に開催された会社説明会だけ参加しました。場所は豊洲のIHIビル。とてもきれいな場所にあります。ちなみに研究所は神奈川。

日本の工業技術を牽引してきた歴史のある企業でもあり、技術力を大事にしているという印象を受けました。

説明会自体は可もなく不可もなくといった感じ。重工業界について少し詳しくはなれるかも。説明会への参加は必須ではありません。

推薦をとれれば落ちる可能性は低いみたいです(たぶん)。私の大学からは多くの専攻から毎年コンスタントに入社しています(たぶん)。

 

住友重機械工業

精密機械が強いイメージですね。超伝導分野向けの冷凍機なんかもつくっています。

私は4月中旬に開催された会社説明会に参加しました。

今年度の研究所の採用人数は10人程度とのことで、倍率は高そうです。少数精鋭が売りみたいです。選考・採用は部門別です。

話をきいて感じたことは、透明性が高い会社であるということです。人事の方も自社の強みだけを強調するようなことはなく、客観的な情報を提供しようという姿勢がうかがえました。

 

まとめ

どちらも魅力的な企業でした。事業のスケールが大きくてかっこいいです。早期に別企業から内定をもらっていなければ選考を受けていたと思います。

 

 

2016卒、理系大学院生の就活記録【NEC中央研究所】

大企業の研究所の中でも比較的立地が良いということで、NEC中央研究所の選考を受けました。機械学習データマイニングなんかにも興味があったので。

参加したイベント・選考

  1. 合同説明会-3月上旬
  2. 学内説明会-3月中旬
  3. 研究所見学会(全部門)-3月下旬
  4. 研究所見学会(部門別)-5月中旬

 

1. 合同説明会-3月上旬

中央研究所の社員の方が数人来ていて、社員1:学生2~3くらいのグループで質問をする機会がありました。合説にしては比較的詳しい話を聞けましたね。

 

2. 学内説明会-3月中旬

学内にある建物の一室で開催。

自分と同じ学科出身のリクルーターの方が複数人

ここでリクルーターの方の連絡先をききました。研究所見学会の詳細などはリクルーターに直接質問するのが手っ取り早いですね。

私の場合、疑問に思ったことはどんどんリクルーターの方にメールで質問してました。リクルーターは直接選考には参加しないので、割と気楽に接していいと思います。

 

3. 研究所見学会(全部門)-3月下旬

中央研究所内で開催。

各研究部門の説明を個別にきくことができました。

自分の研究内容を1分程度で簡単に説明する時間もありました。自分の研究を解りやすく伝える技術は理系大学院生が就活をするときにはとても大切です。

 

4. 研究所見学会(部門別)-5月中旬

部門で個別に開催される見学会です。午前と午後に1部門ずつ入れれば1日に最大2部門まわれます。

私はある1部門の見学会に参加しました。その日参加していた学生の人数は10人程。

始めに研究所内をまわりながら、それぞれの研究グループでの研究内容の説明を受けました。

次に、一人ずつ自分の研究の紹介を10分程度で行いました。他の参加者の発表も聴くことになるので、けっこう時間がかかります。

二日後くらいにリクルーターを通して研究内容が業務とマッチしないという連絡を受け、やんわりと落とされました。

別の部門を新たに希望することもできましたが、他の企業から内々定をもらっていたので、ここでNEC中央研究所の選考は終わりにしました。

 

2016卒、理系大学院生の就活記録【住友電気工業】

住友系の素材メーカー(B to B)ということで安定していそうだったので、住友電気工業の説明会等に参加しました。

 

参加したイベント

  1. 合同説明会-3月上旬
  2. 会社説明会-3月下旬
  3. 工場見学会-5月中旬

 

1. 合同説明会-3月上旬

学内で開かれた合同説明会にブースがあったので、話をきいてみる。

創業当時は主に電線を製造していましたが、現在では電線事業から派生した様々な製品(光ファイバなど)も取り扱っています。インフラに強み。

スライドがきれいで説明も解りやすかったため、好印象をもちました。

 

2. 会社説明会-3月下旬

都内のきれいなオフィスの一室で開催。

合同説明会では事業内容の説明が主だったのに対して、会社説明会では社風や自社の課題など、一歩踏み込んだ説明がされました。人事の方がいい人。

安定・堅実な社風とのこと。

リストラはしない!と明言していたことが印象的でした。

 

3. 工場見学会-5月中旬

参加人数は30名ほどで、二組に分かれて工場見学。

希望した場合、見学会後にリクルーターの方と話ができます。社員の方の業務内容や社員寮についてなどの質問ができるので、第一志望の方は積極的にリクルーターとコンタクトをとることをおすすめします。自分の研究内容を簡単に紹介する時間もありました。

見学会後にリクルーター面談をすると交通費が支給されるので、遠方の方は助かりますね。

工場見学会の予約時などリクルーターの方がとても丁寧に対応してくれました。好印象。

 

まとめ

各イベントを通して感じたことは良くも悪くも安定・堅実な社風であるということです。他社の内定が決まり、また業務内容にあまり面白味を感じれなかったということもあり、私は面接には進みませんでした。

説明会等で会った社員の方はみなさんいい人でした。

 

▼前の就活記事

2016卒、私の就活 - 理系研究者のあんてな

 

 

心臓の動きを利用した高効率発電 ― PNAS

生体臓器の動きを利用して効率的に発電するフィルム状のフレキシブルデバイスが、イリノイ大学の研究グループによって開発されました。
本研究では、発電効率の高い薄膜状デバイスの作製を可能とする材料加工技術に加えて、カギとなるパラメタや材料特性に基づいて発電量を予測する正確な解析モデルが開発されています。

この新規デバイスにはペースメーカーなどの生体機器や、健康状態をモニタリングするウェアラブルセンサーへの電力供給など、多くの応用が考えられます。

デバイスの主材料は、機械的に変形された際に電圧を生み出す圧電材料*1であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)*2です。
フレキシブルなプラスチックであるポリマイドの上に薄膜状のPZT(下図:金色のシート)と整流器(下図:黒いチップ)、そして電気エネルギーを溜めて出力するためのmmサイズのバッテリー(下図:銀色のチップ)が構成されています。

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本研究では、力学エネルギーを電気エネルギーに変換するこれらのデバイスにおける変換効率を予測し、関連するエネルギー変換現象の理解を深めるために、生きた動物を用いてフレキシブルPZTデバイスの実験を行い、機械的な耐久性と生体環境下での安定性を確かめています。

さらに研究グループは、デバイスを多層構造にすることでより発電効率が高くなることを理論・実験の両面から確認しています。早期の実用化が期待されますね。

 

P. S. 実験では何種類かの動物の心臓、肺、隔膜を用いています。

 

Source: Power from the Heart | U.S. DOE Office of Science (SC)

Reference:
1. C. Dagdeverin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2014).

Conformal piezoelectric energy harvesting and storage from motions of the heart, lung, and diaphragm

*1:圧力をかけると電圧を生じ、逆に電圧をかけるとそのものが伸縮する材料。

*2:圧電性を有する代表的な圧電体のセラミックス。