理系研究者のあんてな

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心臓の動きを利用した高効率発電 ― PNAS

生体臓器の動きを利用して効率的に発電するフィルム状のフレキシブルデバイスが、イリノイ大学の研究グループによって開発されました。
本研究では、発電効率の高い薄膜状デバイスの作製を可能とする材料加工技術に加えて、カギとなるパラメタや材料特性に基づいて発電量を予測する正確な解析モデルが開発されています。

この新規デバイスにはペースメーカーなどの生体機器や、健康状態をモニタリングするウェアラブルセンサーへの電力供給など、多くの応用が考えられます。

デバイスの主材料は、機械的に変形された際に電圧を生み出す圧電材料*1であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)*2です。
フレキシブルなプラスチックであるポリマイドの上に薄膜状のPZT(下図:金色のシート)と整流器(下図:黒いチップ)、そして電気エネルギーを溜めて出力するためのmmサイズのバッテリー(下図:銀色のチップ)が構成されています。

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本研究では、力学エネルギーを電気エネルギーに変換するこれらのデバイスにおける変換効率を予測し、関連するエネルギー変換現象の理解を深めるために、生きた動物を用いてフレキシブルPZTデバイスの実験を行い、機械的な耐久性と生体環境下での安定性を確かめています。

さらに研究グループは、デバイスを多層構造にすることでより発電効率が高くなることを理論・実験の両面から確認しています。早期の実用化が期待されますね。

 

P. S. 実験では何種類かの動物の心臓、肺、隔膜を用いています。

 

Source: Power from the Heart | U.S. DOE Office of Science (SC)

Reference:
1. C. Dagdeverin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2014).

Conformal piezoelectric energy harvesting and storage from motions of the heart, lung, and diaphragm

*1:圧力をかけると電圧を生じ、逆に電圧をかけるとそのものが伸縮する材料。

*2:圧電性を有する代表的な圧電体のセラミックス。